和解でも判決でも、既払金をさしひくというプロセスがあります。たとえば、休業損害一〇〇〇万円のうち、相手の自動車保険ですでに七〇〇万円を払っていれば、それをさしひかなければなりません。ここで注意すべきは、原告側か損害として計上しなかった(またはできなかった)損害は、既払金に組み入れてはいけないということです。たとえば、原告が資料から把握できた治療費は、七〇万円なのに、被告側損保は四〇〇万円の治療費を払っているから、それをさしひけという主張が出ることがあります。治療費の支払いは、損保と病院が直接やりとりするため、治療費の裏付け資料が被害者の手に一部分しか渡されないことがあります。こういう場合には、被告側損保の言っている治療費の明細と、原告が把握しているそれをつき合わせる必要があります。どんな項目にせよ、損害として計上した金額について、その全部または一部を被告側損保で払ったというのなら分かりますが、損害として計上していない金額を、払ったといって引かせようとするのは、整合性がありません。損保側が意識的にそういうことをするとまでは言いませんが、訴訟において、このようなすり替えの主張が、被告側損保からよく出ます。少額ですと見逃しやすいですから、被害者もその代理人の弁護士も、照合が肝心です。損保の都合で和解を先送りする場合の「調整金」「調整金」の関係で、被害者(原告)としては留意すべき点があります。「調整金」を含む和解案が裁判官から示された場合、原告と被告が検討のうえ、次回期日に和解斡旋案の諾否を回答するというのが慣行です。双方が承諾すれば、直ちに和解成立となります。原告側は和解を受諾する旨、早い時点で回答したのに、被告側損保が、「まだ本店の部長決裁が下りない」とか、「人事異動があり、新任の部長が着任する四月まで待ってほしい」などということがあります。この結果、解決は最低一か月は先送りされます。このように被告側の一方的事情で回答を引き延ばされた場合には、「調整金」を加算してもらうのが合理的です。損害認定額八〇〇〇万円の場合、一か月分の調整金は一六万六〇〇〇円になります。